
What should I do with my life? わが人生、何をすべきか。
これは、言わば皆さんがどんな人生ドラマを演ずるべきか、そのシナリオの大筋を決めるという大変大事な問いかけですね。
どうか皆さん、自分が演ずる人生ドラマのシナリオは自分で書く努力をしてください。あなたの個人的能力を最大限に発揮し、人生を大いに楽しむことができるアンビシャスなシナリオを創作しましょう。ここではあなたの創造性も問われます。本学の役割は、そのシナリオを成功させる最適の道筋を整え、あなたにガイダンスを与えることです。
人生の能力は二つの要因によって定まるとされています。一つは持って生まれた"天性"、すなわち、遺伝情報であり、もう一つは教育環境による"育成"すなわち、遺伝外情報獲得です。
あなたの持って生まれた"天性"はあなただけのものです。あなたの長所、短所を大人の入口に立った今、もう一度、詳しく調べてみましょう。自分がどのように他人と違うか、何が得意か、何に感動するか、本学の競争的環境の中では、自分が前より一層鮮明に見え、"天性"の再発見もできるでしょう。本学ではこのあなたの"天性"を最大限に"育成"することに努めるのです。
ここに二つの教育があります。一つは受ける教育、もう一つは、カウンセリングは先生から受けるとしても、自らやる自主教育です。あなたの潜在能力を引き出し、あなたの天性を育成するにはこの自主教育が大きな役割を演ずることを知ってもらわねばなりません。
人類文明の歴史を辿りますと、先人達は人間の能力の限界へ挑戦してきたと言えます。
- 19世紀以来の機械工学の発展は、身体で仕事をする能力へ挑戦してきました。さまざまな機械を工夫して、より高速に、より強大にと、われわれの物理的活動能力を飛躍的に拡大してきました。
- 20世紀以来の機械工学の発展は、頭でものを考える能力の限界へ挑戦してきたと言えます。より高性能のコンピュータを開発して、情報処理能力を上げ、われわれの頭脳労働力を著しく高めてきました。
- 21世紀、われわれは今、バイオ・メディカルテクノロジーを発展させ、生命維持能力の限界、つまり寿命の限界に挑戦しているのです。
本学は、もちろん、この第三の挑戦の一翼を担っています。あなたもこの挑戦に参加してみませんか。


学長 江崎 玲於奈
ノーベル物理学賞受賞
日本国際賞受賞
勲一等旭日大綬章受賞